高齢者

2023年7月4日|カテゴリー「高齢者
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みなさん、毎日お食事を楽しんでいますか?

年齢を重ねてくると、
「だんだん食事を食べ終わるのに時間がかかるようになってきた」
「なんだか食べにくい食べものが出てきた」
などと感じられる方や、年齢を重ねたご家族の食事の様子を見て感じられる方もいらっしゃるかもしれません。

今回は、いつまでも自分の口から安心して食事を楽しめるよう、
まずは「食べる」ってどういうことなのかをお話して、知っていただきたいと思います。

「口から食べる」とは

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「口から食べる」ということ。
生まれた時には母乳やミルクを吸うことしかできなかったのに、
いつの間にか私たちは当たり前のように食べものを噛んだり飲み込んだりしています。

当たり前すぎて何気なく行っている「口から食べる」ですが、
実は単に噛んで飲み込むことだけでなく、さまざまなプロセスを経て「口から食べる」という行為が成り立っています。

「口から食べる」一連の流れをみていきましょう。
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「口から食べる」一連の動作のことを、摂食嚥下(せっしょくえんげ)といいます。
摂食嚥下は5段階に分けることができます。

①先行期:食べ物を認識して、食べ物を口に運ぶ段階
目の前の食べ物を見て、過去の記憶をもとに、そのかたさや温度、
味を想像し、何を、どのくらい、どのように食べるのかを決定します(認知)。
そして、手で(または箸やスプーンを使って)食べ物を口元まで運びます(摂食行動)。

②準備期:咀嚼ができ、だ液と食べ物を混ぜて、嚥下(飲み込み)しやすい食塊(食べ物のかたまり)を形成するまで
口を開け、食べ物を口の中にとり込みます。
このときしっかり口唇は閉じ、食べ物をつかんだり、または前歯で噛み切ったりします(捕食)
口の中で、かたさや温度、味を感じながらかみ砕きます(咀嚼、そしゃく)。
このとき歯だけではなく、舌や唇、頬、顎を巧みに動かし、
だ液と混ぜながら飲み込みやすい塊(食塊、しょっかい)を作ります(食塊形成)。

③口腔期:食塊を口腔より咽頭へ送り込み嚥下反射が起こるまで
飲み込みやすい塊(食塊)ができたら、舌を使って咽頭(のど)のほうに送り込みます(食塊移送)。

④咽頭期:食塊を咽頭より食道に送り込む時期
咽頭(のど)に食べ物が送られると、
「ゴックン」という嚥下反射が起こり、あっという間に咽頭(のど)から食道へ入っていきます。
この間わずか0.6秒。
この一瞬は呼吸を止めています。
鼻や気管へ食べ物が入らないように蓋の役割をしている弁があり、
この瞬間は鼻腔や気管の入口は閉じています。
ここで、うまく「ゴックン」のタイミングが合わず、誤って食べ物が気管のほうに入ってしまうことを「誤嚥(ごえん)」といいます。

⑤食道期:食塊を食道から胃に送り込む時期
食塊は、食道の蠕動(ぜんどう)運動により胃へと進みます。
食べ物が胃に入ると食べ物が逆流しないように胃の入口は閉じています。

このように、「口から食べる」動作はさまざまなプロセスがあります。

どうして飲み込みにくくなるの?

高齢になってくると、

・加齢とともに歯が欠損する
・舌の運動機能が低下する
・咀嚼能力が低下する
・唾液の分泌が低下する
・口の中の感覚が鈍くなる
・咽頭への食べ物の送り込みが遅くなる

など、機能的な変化により、摂食嚥下に問題が起こりやすくなります。

飲食ができないことによって栄養状態が悪くなり低栄養となったり脱水を起こしたり、
食べ物が気道に入ることによって起こる誤嚥性肺炎になってしまったり、
窒息や飲食ができないことによる「食べる楽しみ」を失ってしまうなど、
さまざまな問題が出てきます。

今、問題が特にないという方でも、早めに元気なうちから食事の工夫やケアを知り実践することで、
長く自分の口からおいしく食べられるのではないかと思います。