血液検査で中性脂肪が高いと言われたら(高トリグリセライド血症)

2021年11月24日 |カテゴリー「生活習慣

そもそも中性脂肪ってなあに?

中性脂肪は、私たちが生きていくのになくてはならないエネルギー源です。
中性脂肪は私たちの最も大事なエネルギー源であるブドウ糖が足りない時に、それを補うかたちをしています。

また、脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・D・K)などを吸収するために不可欠です。

中性脂肪は、グリセリン(グリセロール)に3つの脂肪酸がくっついています。
中性脂肪はトリグリセライド(トリグリセリド)ともいいますが、「トリ」はラテン語で「3」のことです。

中性脂肪は、いわゆるよくいわれる「脂肪」のことです。

中性脂肪はどこから来てどこに行く?

中性脂肪は、小腸で吸収された後、体内を移動して身体中に運ばれます。
身体中に運ぶためには、リンパ液や血液に溶ける必要があります。
しかし中性脂肪は『脂肪』、いわゆるあぶらなので、そのままではリンパ液や血液に溶けることができません。

そこで、たんぱく質と結合して『リポたんぱく質』となることで、リンパ液や血液に溶けて移動することができるようになります。

ですから、血液中の中性脂肪が高いという状態は、正確にいうと
血液中に中性脂肪を多く含むリポたんぱく質が増えた状態」になります。

血液中の中性脂肪は、
・食事に含まれる中性脂肪が血液中に放出されたもの(外因性)
・肝臓でつくられた中性脂肪が血液中に分泌されたもの(内因性)
とがあります。
リポたんぱく質というかたちになった中性脂肪は、身体を巡って筋肉・脂肪や肝臓などの全身の臓器に取り込まれていきます。
そして、エネルギーとして使われたり、貯蔵されたりします。

臓器に取り込まれる時に大事なはたらきをするのが、リポたんぱく質リパーゼという酵素です。
リポたんぱく質リパーゼによって、リポたんぱく質中の中性脂肪が分解されて脂肪酸やグリセリンとなり、
細胞に取り込まれることになります。

中性脂肪が高いとどうなるの?

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中性脂肪は大事なエネルギー源なので、身体は可能な限り中性脂肪を取り込みます。
しかし、中性脂肪の高い状態が続いて身体に過剰にたまってしまうと、
皮下脂肪や内臓脂肪が増加して肥満となり、高血圧や糖尿病を引き起こしたり悪化させたりします。

また、肝臓に中性脂肪が過剰にたまった状態を脂肪肝といいます。
脂肪肝がさらに重症になったものを非アルコール性脂肪肝炎(NASH)といい、
肝硬変や肝臓がんまで進むこともあります。

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血液中の中性脂肪が高い方は、超悪玉コレステロールが高くなり、
善玉コレステロールであるHDLコレステロールが低くなることが多いため、動脈硬化症が進みやすくなることも
分かっています。

中性脂肪が高くなる原因と対策は?

血液中の中性脂肪が高くなる原因は、
①血液に入ってくる中性脂肪が多くなる場合
②中性脂肪の分解が悪くなる場合

の2つがあります。
●中性脂肪を多く含むものを摂りすぎた場合
・バターやクリームなどの乳脂肪の多いもの
・牛肉、豚肉などの脂
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これらを多く摂りすぎると、吸収される中性脂肪が多くなることで血液に多く流れ込むようになります(外因性)。

これらは、中性『脂肪』という名がついているのでイメージできますよね。
しかし、上記以外にも中性脂肪が高くなる原因があります。


●炭水化物(糖質)、アルコールを摂りすぎた場合
特に、
・糖質を多く含む菓子類や飲み物
・果物
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炭水化物(糖質)は一見脂質と関係なさそうですよね。
しかし、炭水化物(糖質)の摂りすぎは肝臓での中性脂肪を合成を増やしてしまいます(内因性)。

通常、摂取した糖質はグルコースに分解されたあと、エネルギー(ATP)に変わります。
しかし、「エネルギー(ATP)」というかたちでは身体に貯めておくことができません。
したがって、身体に必要なエネルギーが満たされると、グルコースからエネルギーに変わる反応を途中でストップさせ、余ったグルコースは貯めておくことのできる「中性脂肪」というかたちに変身させます。
これが、炭水化物(糖質)の摂りすぎが肝臓での中性脂肪合成を増やしてしまう理由です。

炭水化物の中でも、ごはんなどの穀物よりも、
スナック菓子や甘いお菓子、果物、果物ジュースや砂糖入りのジュースが中性脂肪を高くしやすいといわれています。
アルコールも中性脂肪に影響を与えるといわれています。

ご飯やパンなどの主食を極端に減らす前に、
スナック菓子や甘いお菓子、果物、ジュース類、アルコールを摂りすぎていないか、
振り返ってみましょう。
そのうえで、主食の量が適量であるかどうか確認してみると良いですね。

特に、夕食時に食べる量が多かったり、夕食後に食べたりすると中性脂肪が高くなりやすくなるといわれています。
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野菜や海藻類、きのこ類、大豆製品など植物性の食品に多く含まれる食物繊維は、
胃や腸をゆっくり移動しながらコレステロールや中性脂肪を包み込み体外へ排出する働きがあるといわれています。

玄米ごはんや麦ごはんは、精白米ごはんより食物繊維を多く含みます。
主食は毎食摂ることが多いので、精白米ごはんを玄米ごはんや麦ごはんに替えてみるのも良いですね。
ただし、ごはんは炭水化物を多く含むので、食べ過ぎにはご注意くださいね。
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また、
・魚類
の摂取量を増やすことは、中性脂肪を下げるためにおすすめです。
魚の油に含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸が血液中の中性脂肪を減らすといわれています。
メタボリックシンドローム、運動不足などではインスリンが効きにくい状態(インスリン抵抗性)になります。
この状態になると、肝臓の中性脂肪の合成が増えてしまうだけでなく、
中性脂肪を分解するリポたんぱくリパーゼという酵素のはたらきが悪くなってしまいます。
そのため、リポたんぱく質の中の中性脂肪が分解されず、血液中に長くとどまってしまい、中性脂肪の高い状態が続くことになります。
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運動をすると、リポたんぱくリパーゼが活性化し、中性脂肪を分解する作用が働きます。

リポたんぱくリパーゼ酵素を活性化させるため、
運動習慣をつけることも大切なことですね。

座りっぱなしのことが多い方は、まず日常生活の中で活動する量を増やし、歩数を増やすことから始めてみましょう。