運動をすると糖尿病はよくなるの?

2021年08月09日 |カテゴリー「生活習慣

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今回は食事の話ではありませんが、糖尿病の治療で大切な運動療法について、お話したいと思います。

糖尿病の治療は、食事療法だけではなく、運動療法、必要であれば薬物療法を組み合わせて行うことが大切です。
食事療法と運動療法には、それぞれ独立した代謝機能改善作用があるとされていますが、
食事療法と運動療法を組み合わせることによって、いっそう高い効果が期待できます。

運動には、
・血糖を下げる作用
・減量効果
・高血圧や脂質代謝の改善
・心肺機能の改善
・インスリン抵抗性の改善
・骨粗しょう症予防
・リフレッシュ効果

など、さまざまな効果があるといわれています。
運動は良いことがたくさんありますね。

その中でも、血糖値がどうして下がるのかを今回は詳しく説明していきたいと思います。

運動によって血糖値が下がる仕組み

運動によって血糖値が下がる仕組みには、骨格筋の細胞内にある
GLUT4(グルットフォー)
というグルコース(ブドウ糖)を体内に運ぶ働きをするたんぱく(グルコース輸送体)
が大きく関わっています。
GLUT4がはたらく時は、
①インスリンが関わることではたらく時(インスリン依存性の回路)
②インスリン関係なくはたらく時(インスリン非依存性の回路)
の2種類があります。

①GLUT4がインスリンが関わることではたらく時(インスリン依存性の回路)

食事から得られたブドウ糖が血液中に放出されて血糖が上がると、
膵臓からインスリンが分泌されます。

インスリンは、ブドウ糖を骨格筋や脂肪細胞に送り込むための仲介役として、
骨格筋や脂肪細胞の表面に行き、ノックをして細胞にブドウ糖があることを伝えます。
(このことをインスリン伝達といいます。)

骨格筋内や脂肪細胞内に潜んでいるGLUT4がインスリンのノックに応えて
ブドウ糖を細胞内に取り込むことで、血糖値が下がります。

取り込まれたブドウ糖は、骨格筋ではグリコーゲンとして貯蔵され、
脂肪組織では中性脂肪として蓄積されます。

インスリン関係なくはたらく時(インスリン非依存性の回路)

運動で筋収縮が起こると、インスリンの刺激を受けなくてもGLUT4が活性化し、
骨格筋細胞内へのブドウ糖取り込みを促進させます。
筋肉がブドウ糖を取り込むことで血糖値を下げます。

この働きはインスリンは関係していないので、
インスリン分泌が低下している患者さんやインスリン抵抗性が亢進した患者さんでも効果が期待できます。

運動の急性効果

運動の「急性効果」は、1回の運動中~運動後数時間に生じる効果です。

これは、先ほどお伝えした
インスリン関係なくはたらく時(インスリン非依存性の回路)

のはたらきの要因が大きく、
健常人、2型糖尿病患者さんともに、朝食時に安静にした場合と比べて
食後30~45分間の運動によって食後65~95分まで血糖の低下が認められたという
報告もあります。

ただし、この急性効果は48時間後にはほとんど消失してしまいます。
したがって、次にお伝えする「慢性効果」も重要となってきます。

運動の慢性効果

慢性効果は、継続して長期間実施することによって表れる効果です。

長期的に運動することによって、GLUT4が増えて、糖を取り込んで血糖値を下げます。
また、筋肉の細胞内の脂質が減ることでインスリンの感受性が上がり、
筋肉が糖を取り込んで血糖値を下げます。

他にも、細胞内のミトコンドリアの生合成が上がることや栄養や酸素を運ぶ血管が増えるなど、
さまざまな機序でインスリンの感受性が上がり、糖の取り込みが良くなり血糖値を下げます。

運動を始める前に注意していただきたいこと

今回は運動による効果をご紹介しましたが、
身体の状態によっては、運動療法を制限したほうがよい場合もあります。

また、インスリンやインスリンの分泌を促す薬を飲んでいる方は、低血糖になりやすくなる場合もあります。

運動療法を始める前に、一度主治医と相談してくださいね。