適度な飲酒、できていますか?

2021年06月07日 |カテゴリー「生活習慣

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2021年3月下旬、大手酒類メーカー各社が缶ビールなどに含まれるアルコール量(純アルコール量)をグラムで表示する取り組みを始めると、ニュースになりました。
ご覧になった方はいらっしゃいますか。


外出を控え、家飲みする機会が増えた方もおられるかと思います。
自宅だからと安心してつい飲み過ぎてしまい、飲酒量が増えてはいませんか。

今回は、適度な飲酒についてお話したいと思います。

適度な飲酒量ってどのくらい?

厚生労働省が定めた『健康日本21』という国民の健康のための方針では、

節度ある適度な飲酒量として

1日当たり 純アルコール量20g 


と定めています。

ただし、
・女性は男性よりも少ない量が適当である
・少量の飲酒で顔が赤くなるなどアルコール代謝能力が低いと考えられる方は、少ない量が適当である
・65歳以上の高齢者の方は、より少量の飲酒が適当である
・アルコール依存症の方については、適切な支援のもと完全断酒が必要である
・飲酒習慣のない方に対してこの量を飲酒を推奨するものではない
と記載があります。

純アルコール量ってどうやって計算するの?

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お酒によってアルコール度数は異なります。

実際に飲んだアルコール量を知るには、

飲んだ量(mL) × アルコール度数(%)÷100 × 比重(0.8)

で分かります。


アルコール度数5%のビールを中びん(500mL)飲んだとすると、


500(mL) × 5(%) ÷ 100 × 0.8
=20gとなります。

純アルコール量20gはお酒の量でどのくらい?

・ビール(アルコール5%)なら中びん1本(500mL)
・日本酒(アルコール15%)なら0.9合(162mL)
・焼酎(アルコール35%)なら0.6合(108mL)
・ワイン(アルコール12%)なら1/4本(188mL)
・ブランデー(アルコール43%)ならダブル(60mL)
・ストロングチューハイ(アルコール9%)なら350mL缶0.8杯(278mL)

となります。
最近多いストロングチューハイは、1缶(350mL)飲むと適量を超えてしまいますね。

アルコールの肝臓での処理能力には個人差があるので、
お酒に弱い方や女性や高齢者はこれよりも少なめを適量と考えます。

アルコールは中身のないエネルギー

アルコールのエネルギーは1gあたり7kcalです。
ただし、アルコールは糖質、たんぱく質、脂質の三大栄養素を含まないため、
「中身のないエネルギー」
また、カロリーは高いのに栄養がからっぽであるという意味で
「エンプティーカロリー」
ともいわれています。

アルコールの身体への影響は?

アルコールは消化を必要としないので、そのまま胃や小腸ですぐに吸収され肝臓に運ばれます。
肝臓では、アルコール分解酵素のはたらきでアセトアルデヒドという物質に変化します。

アセトアルデヒドは身体にとって毒なので、さらにアセトアルデヒド分解酵素で酢酸になり、
最終的には二酸化炭素と水に分解されます。


アルコール(身体にとって毒)
↓ ←アルコール分解酵素
アセトアルデヒド(身体にとって毒)
↓ ←アセトアルデヒド分解酵素
酢酸
↓ 
二酸化炭素・水
お酒を飲むと、アルコールは身体にとって毒なので、
アルコール分解と、アルコール分解によって生じる有毒なアセトアルデヒドの分解が最優先の仕事になります。
これは最後の1滴が分解されるまで続きます。

肝臓は糖質をグリコーゲンとして貯蔵し、緊急時には糖を作って血液中を正常に保つという大事なはたらきをしています。
そのため、お酒だけを飲んでいると肝臓は正常にははたらかず、
糖を放出できなくなって低血糖状態となります。
このような理由で飲酒をするとお腹がすいて過食気味になります。

糖尿病の方は、お酒を飲むと血糖値が上がることを心配されることが多いですが、
低血糖に注意が必要です。
特に、インスリンや経口血糖降下薬を使用している方では低血糖が起こりやすくなります。
他に、肝臓のはたらきが低下すると経口血糖降下薬の代謝も悪くなり、
効果が弱くなったり、逆に副作用がでやすくなったりすることもあります。
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肝臓は糖の貯蔵庫でもあり、糖を作る工場でもあります。
肝臓は糖質をグリコーゲンとして蓄え血糖を一定に保ちますが、
グリコーゲンという形で貯蔵する量は成人でも200g程度しかありません。
これは、絶食状態で24時間でほぼ使い果たしてしまう量です。
飲酒を毎日続けると、身体の中での糖の産生も補給もうまくいかなくなるので、
やはりきちんと休肝日を作ることが大切ですよ。
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アルコールと一緒に摂った糖質の代謝は、後回しにされます。
一旦脂肪に合成されて蓄えられます。
日本酒やビールには炭水化物として糖質が含まれています。
したがって飲酒を続けると、どんどん脂肪合成が進み、内臓脂肪となってたまることになります。
この過剰状態がメタボリックシンドロームです。
さらには、肝臓も脂肪まみれになってアルコール性脂肪肝炎となります。
一方、肝臓にたまりきれなかった分は血液中にあふれてきます。
中性脂肪となり高中性脂肪血症を引き起こします。
重症の高中性脂肪血症は膵炎の原因となり、糖尿病を悪化させることもあります。
また、アルコールは直接作用で尿酸の産生量を増やすだけでなく、
腎臓からの排泄量も減らすため、血中の尿酸値が高くなります。
お酒にプリン体が含まれると、尿酸を作る材料として上乗せされます。

適量を守って、おいしく楽しく飲酒

さまざまなアルコールの身体への影響を紹介しましたが、
それでもお酒はおいしいものですよね。
お酒の身体への影響を理解したうえで、うまく付き合っていくことが大切です。
飲み過ぎず、きちんと休肝日を作って生活習慣を整え、
身体にやさしいお酒の飲み方を心がけてくださいね。