食品成分表が新しくなりました

2021年09月23日 |カテゴリー「生活習慣

vegetable1
皆さん、食品成分表をご存知でしょうか。

食品成分表は、正しくは『日本食品標準成分表』といいます。
国(文部科学省)が公表しています。
私たちが日本で日ごろ食べている食品について、
栄養成分に関するデータをとりまとめた唯一の公的データ集です。
1950年(昭和25年)に最初のものが発表され、
昨年2020年12月25日に『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』が発表されました。
『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』には、
エネルギーや栄養素量が記載されたいわゆる食品成分表の他に、
炭水化物成分表編、アミノ酸成分表編、脂肪酸成分表編の合計4冊があります。
平成に入ってからは、5年ごとに改訂されており、今回は大きく内容が改訂されました。

その内容がどのように改訂されてのか、簡単にお伝えしたいと思います。
今回の改訂のポイントは次の3点です。

①調理済み食品に関する情報の充実
②炭水化物の細分化とエネルギーの算出方法の変更
③主菜食品数の増加など

これらを順番に説明していきますね。

①調理済み食品に関する情報の充実

food_zei_takeout_woman
最近はコンビニやスーパーなどの食品売り場などで販売されているお惣菜や、店舗でのテイクアウトなど、出来合いの料理を利用することも多くなってきました。

これまでにも、
・カレーや餃子、コロッケ、魚フライなど一部の食品が『調理加工食品類』として記載
・本表ではなく資料として総菜の成分値を記載
されていたのですが、

今回の改訂では、需要が増えている冷凍、チルド、レトルトの状態で流通する食品について、
本表に『調理済み流通食品』の食品群が新たに設けられました。
それに伴い、収載された食品の数も増えました。

もちろん同じ餃子でも商品によって成分や量は異なりますが、
大まかな値を知るためには大変役に立ちますね。

②炭水化物の細分化とエネルギー算出方法の変更

今回の一番重要な改訂は、こちらです。

これまでの食品成分表では、炭水化物そのものを測定するのではなく、
食品の重量から水分、たんぱく質、脂質、灰分を差し引いた残りを炭水化物として算出されていました。
そのため、ヒトにおける消化性が低い(吸収されにくい)糖アルコール、消化性が高いでんぷん、単糖類、二糖類までの多様な成分が
混ざっている状態でした。

今回の改訂では、
・エネルギーとして利用性の高いでんぷん、単糖類、二糖類からなる「利用可能炭水化物」
・エネルギーとしての利用性の低い炭水化物である「食物繊維総量」「糖アルコール」
とそれぞれエネルギー換算されるようになりました。
窒素量の分析値に一定の換算係数(6.25等)を乗じて計算される「たんぱく質」から、
たんぱく質を構成するアミノ酸(約20種)の残基量の合計から算出される「アミノ酸組成によるたんぱく質量」に変更されました。

有機溶媒可溶性成分の総質量である「脂質」から、
飽和・不飽和等の脂肪酸の分析値を換算した「脂肪酸のトリアシルグリセロール当量」
に変更されました。


今回の改訂では、実測できるエネルギー産生成分について、
より各成分由来の産生量に近いエネルギー値を表すことができます。
また、これらの変更により、食品によってはエネルギー含量の増減が見られます。
cocoa
例えば、エネルギー量が増加した食品のひとつとしてココアが挙げられます。
七訂   → 八訂
271kcal →386kcal
となっています。
しかし、この値はココアの粉末100gあたりの値です。
実際に飲む時は、例えば5g程度の利用となるため、
その影響は少なく19.1kcalの増加となります。
amount_gohan_ochawan3
一方で、摂取頻度の大きい食品への影響は大きくなります。
その例はお米(米飯)です。
炊飯された米飯約1杯(130g)のエネルギー量は
七訂   → 八訂
218kcal →203kcal
となっています。
仮に1日3回、400gの米飯を摂取したとすれば
672kcal→624kcal となり、48kcalの減少となります。

国民健康・栄養調査の結果から代表的な食品構成を想定して、
1日の食事でその増減を計算すると、
七訂   →八訂
1868kcal →1719kcal
とあるとの試算が方向されています。
149kcalの減少となりますね。

外食、中食など市販の食品などについては、
今後はどこかのタイミングで七訂の値から八訂の値に切り替わることになります。
また、
・新たに「ナイアシン当量」が追加
・一部の食品(鶏卵など)でビタミンDの値の変更
されています。

③収載食品数の増加など

収載食品数が2191食品から2478食品に増えました。
最初の538品目から改訂のたびに増加してきています。

成分表は日本人の食生活や社会環境の変化によって食卓によく上がるようになったものを
反映させています。

・類似する収載食品がないもの
キヌア、チアシード、こんにゃくゼリーなど

・成分が従来品から大きく変化する可能性のあるもの
梅干し、減塩タイプの米みそ、カップ麺の汁残し状態など

また、2015年(七訂)以降、
・地域伝統食品、アイヌの伝統食品
油ふ、ずんだあん、いぶりがっこ、きはだの実など

・和食を特徴づける食材
大根おろし、桜だんぶなど

が新たに追加されています。
また、食品によってはゆでや焼きなどの調理捜査後の値も収載されており、
実際に摂取する量により近い値を算出できるようになっています。
food_kinua
cooking_genen_miso
zunda_mochi
cooking_surioroshi_daikon

最後に

途中でご飯のエネルギー量が減ったと書きました。
それならば、エネルギーが減った分、ご飯を増やしたら良いのか?というと、必ずしもそうとは限りません。

今までより正確にエネルギーなどが算出されるようになっただけで、
今まで食べていた同じ食品そのものの中身が、急に変わったわけではありません。

私たちは普段販売されている加工食品など食品表示を参考にしますが、
その表示も、±20%の誤差は認められています。
表示されている数値が絶対ではないのです。

食品成分表による栄養価の計算も大切ですが、

一番大切なのは、実際に体重に変化がないか・血液検査などに変化がないかモニタリングすることです。

そのうえで、栄養バランスに偏りがないか、適切な摂取エネルギーであるか
みていくことが大切だと思います。
その時に食品成分表は役立ちます。

自分の栄養バランス摂取状況が不安な方は、一度主治医・管理栄養士にご相談くださいね。