バセドウ病(甲状腺機能亢進症)の病態・検査・治療

脳内の下垂体から甲状腺刺激ホルモンが放出され、
甲状腺の受容体に結合し、
甲状腺ホルモンが産生されます。

甲状腺刺激ホルモンとは別に、
誤って、甲状腺受容体と結合する自己抗体が産生される病気が、
バセドウ病です。

甲状腺ホルモンは、交感神経や心臓を刺激して、脈拍を上げる、代謝を上げるなどの作用があります。
このため、甲状腺ホルモンの産生が過剰となると、
動悸・息切れ・汗をかきやすい・急な体重減少などが起こります。
更年期の症状とよく間違われます。

甲状腺ホルモンは、FT4、FT3の2種類があります。
FT4は、肝臓などでFT3へ変換されます。
血液中の濃度は、FT4のほうが高く、安定しています。
一方、ホルモンとしての活性は、FT3の方が高いです。
バセドウ病では、FT4からFT3への変換が促され、
FT3(pg/mL)/FT4(ng/dL) 比が2倍を超えることが特徴です。

治療について、内服薬は、メルカゾールとプロパジールの2種類があります。
一般に、メルカゾールの方が副作用は少ないため、メルカゾール内服から始め、
副作用が出た場合は、プロパジールへ切り替えます。
一方、胎児奇形のリスクや母乳への移行はプロパジールの方が少ないため、
妊娠初期や授乳中はプロパジールへ切り替えることが多いです。

甲状腺刺激ホルモン正常化→甲状腺ホルモン正常化→原因となる自己抗体正常化の順に改善します。
自己抗体が基準値内に入るまでは、平均2~3年程度を要します。
自覚症状が改善したからと、治療を中断すると自己抗体正常化に至らず、症状再燃を繰り返します。
7割程度は完解する(完全に治る)病気なので、必ず継続して治療を行ってください。

内服薬の副作用として、筋肉痛(筋細胞の破壊)や黄疸(肝機能障害)が多いです。
生命にかかわる副作用としては、汎血球減少と呼ばれる、
骨髄内で免疫を担う白血球を作ることが出来なくなる病気があります。
このため、軽い感冒症状でも、副作用に伴う症状の可能性があるため注意が必要です。
内服開始後8週間は、2週間毎に血液検査を行い、副作用の確認を行います。

内服治療が副作用で行えない場合は、手術、放射性ヨウ素内用療法(アイソトープ治療)を行います
(可能な施設へ紹介します)。
手術は甲状腺を物理的に切除します。入院期間は一般的に1週間程度です。
アイソトープ治療は甲状腺に集まる放射性物質を注射したうえで、放射線照射を行い、
甲状腺細胞を破壊します。治療1週間前~治療後数日間、食事からのヨード摂取制限を行います。
小児や妊娠可能年齢では通常行いません。
手術、アイソトープ治療ともに、術後、甲状腺ホルモンを補う治療が必要となる場合があります。

甲状腺機能亢進をきたす鑑別疾患として、亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎、プランマー病などがあります。
亜急性甲状腺炎は、感冒などを機に、一部の甲状腺細胞が破壊され、
細胞内に貯蓄されていた甲状腺ホルモンが、血液中に分泌されることが原因で発症します。
一時的に甲状腺機能が亢進します。
甲状腺部位に痛みを伴い、症状が強い場合はステロイド内服治療で自覚症状の改善を目指します。
甲状腺内の破壊される部位は移動することもあり、2~3か月程度で改善することが多いです。
血液検査で機能亢進の程度を把握し、エコー検査で破壊の部位や程度を確認しながら、治療を行います。

無痛性甲状腺炎は、亜急性甲状腺炎と異なり、甲状腺の痛みを伴いません。
動機・息切れなどがあり、血液検査で甲状腺機能亢進を認める一方、バセドウ病自己抗体陰性の場合に疑われます。
エコー検査で甲状腺内の一部部位に、甲状腺細胞が破壊された所見を認めます。
血液検査で機能亢進の程度を把握し、エコー検査で破壊の部位や程度を確認しながら、経過の確認を行います。

プランマー病(機能性甲状腺結節)は、甲状腺内に甲状腺ホルモンを産生する腫瘍ができる疾患です。
バセドウ病、亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎に特徴的な、血液検査やエコー検査所見を認めない場合で、
エコー検査で甲状腺内に腫瘍を認める場合に疑います。
シンチグラフィ検査(甲状腺ホルモンを作る材料である(放射性)ヨウ素を体内に注入)を行い、
腫瘍部位へヨウ素が強く集積する一方で、周囲の細胞へは抑制されることで診断をつけます。
根治治療として、手術(腫瘍切除)やアイソトープ治療(バセドウ病のアイソトープ治療記載を参照)があります。
軽症では、メルカゾール内服で、甲状腺ホルモンのコントロールを行える場合もあります。

院長 与田紘一郎 記載(禁無断転載)

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